米国 マスクによるテクノクーデター
深刻で危険な事態が進行中
ダン・ラボッツ
億万長者でトランプ大統領の顧問であるイーロン・マスクは、今や政府効率省(DOGE)の名称をもつチームを率いているが、米国政府諸機関――財務省、人事管理局(OPM)、政府調達局(GSA)、合衆国国際開発庁(USAID)、そしておそらく他も――を引き継いでいる。そしてそれは、少なくともいくつかの場合では違法に見えるプロセスだ。公職者たちが抵抗したところでは、トランプがかれらをその地位から外した。マスクの引き継ぎは、ある種のクーデターと同等で、トランプが2021年1月6日に組織した反乱よりも、はるかに実効性があり、深刻で危険だ。
行政、議会両院、さらに最高裁を支配することで、トランプは明らかに、彼とマスクが罪に問われることなくひとつのクーデターを実行する力を得ている、と確信している。トランプが司法省、FBI、監査総長を粛清することで、政府官僚機構に対するこれらの攻撃を止めるために内部から闘いを挑む者は事実上ひとりもいない。民主党員とアメリカ人権協会のようないくつかのグループは、さまざまな法廷に訴訟を提起し続け、いくつか成功を得てきた。しかし、それらが最後に最高裁に来れば、最高裁が昨年7月に、米大統領にはその公的行為に対し完全な免責が、また他の行為にも幅広く免責が与えられる、と裁決したことを条件に、トランプがおそらく勝つことになる。
政府の規模と費用の削減を訴え続けてきたトランプとマスクは今、財務省が毎年払ってきた2兆ドルを止めるためにコンピューターのキーを押す権力をもっている。そしてそれは、子どもから障害者や高齢者にいたるまでの数千万人、地方と州政府、さらに私的な契約者に影響を及ぼす。かれらは今、事実上250万人にのぼる政府従業員全員の記録を扱うOPMのコンピュータに対する管理権をもっている。そして、政府の不動産を、土地と建物を監督するGSAでコンピュータを押さえた。マスクのチームは今、外国の経済、教育、さらにHIVプログラム向けのような公衆衛生のための対外援助におけるほぼ430億ドルを管理するコンピュータに対しても管理権を得ている。トランプと彼の従順な国防省長官のピート・ヘグセスはすでに、国防省の8200億ドルに上る軍予算を支配している。
われわれは今テクノ・クーデターを目撃中だ。民主党は、トランプとマスクを止めることに失敗し、また当座止めるための計画をまったくもっていない。社会運動と左翼は弱すぎ、すぐに何かを行う力は乏しい。そして、何百万人もの米国人の暮らしに対するトランプの攻撃がかれらの行動を強いる時にはじめて、ひとつの戦略を発展させることになりそうだ。(「インターナショナルビューポイント」2025年2月3日)
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