アイルランド 左翼にとっての歴史的勝利(下)

統一が見せた躍動力を次の闘いへ
底辺の決起に基づく人民権力の左翼政府へ
ポール・マーフィー

社会主義的左翼のかなめの役割

 社会主義的左翼、特に「利益より人民」(PBP)と無所属左翼の活動家はコノリーキャンペーンの決定的な部分だった。全国的に中心的役割を果たしているかなめの活動家の多くは、以前にうまくいった左翼主導のキャンペーンの経験者だった。
 大統領という地位の限界にもかかわらず自らをこのキャンペーンに投じるというPBPの決定は、キャンペーンがもった躍動性、結果、さらに今開けている好機によって適切さが証明された。現場での活動レベルは長期のキャンペーンでは可能だったかもしれないものより低かったとはいえ、そうであってもそれは、能力を必要とする総選挙後の決定的な勝利を意味し、新しい好機に道を開いている。
 PBPに以前は懐疑的だったかもしれない無所属活動家も、PBPが取った建設的で非セクト主義的姿勢を心にとどめている。かれらは、大衆的な多元的でエコ社会主義の党へとそれを建設する活動を共にするためにPBPに加わることを深く考えるに違いない。
 キャンペーンへのPBP関与を批判しつつも、キャサリンに不承不承承認を与えた社会主義左翼の他の部分は、うまくいけば、起きたこと、またそこから彼らが離れていたことについてよく考えるだろう。
 ある種の左右2極化が起き、そして左翼が勝利した。数千人の新たな活動家が初めて動員され、組織化の経験を身につけた。右翼に向けズルズル動いてきた勢いは左翼によって取り戻された。

コノリー陣営内の他の諸政党

 コノリーキャンペーンはまた、彼女を支持した他の政党内部にも一定の動きをつくり出した。社会民主党は彼女の支持でははじめからPBPと共にあった。かれらは左翼内部にひとつの勢いをつくる助けになった。そしてそれが事実上、左翼労働党と緑の党に、コノリー支持かどんな候補者ももたないかの選択を残した。社会民主党のメンバーは地方レベルと全国レベルで熱気をもって活動した。
 シン・フェイン(SF、北アイルランドをも含む独立派:訳者)はそれ自身の立候補を熟慮した後、相対的に遅れてキャンペーンの舞台に上がった。かれらは、将来の代わりになる首相としてマリー・ロウ・マクドナルド(SF党首:訳者)の人気を再び高める機会にそれを利用しつつも、建設的に活動し、中央と地方レベルでのキャンペーンに質を加えた。
 これは、「協力する諸政党の独立性と自律性を尊重する進歩的左翼共和派ブロック」という戦略を実行する最初の真剣な試みだった。それは、前回総選挙後にSF全国議長のデクラン・ケアニーによって先ずもち出されたものだ。
 それはあらゆる基準によろうとも、キャサリン・コノリーの勝利によってだけではなく、世論調査でのSF支持率5%急上昇によっても、ひとつの成功になった。他との協力がSF支持押し上げに効果があると分かった。SFメンバーと同指導部にとって要になる問題は、かれらが今フィネ・ゲールとフィナ・フォイルとの連携を除外するつもりになり、左翼政府に向けたキャンペーンに全エネルギーを投じるか否かだ。
 労働党と緑の党の場合、コノリーのキャンペーンは2極化の進行だった。それは、それらのもっとも右翼的な部分を露出させその足場を切り崩した。労働党前指導者のアラン・ケリーは、キャサリン・コノリーへの反対とフィネ・ゲール支持を言明するためにメディアによってほぼ毎週呼び出された。メディアは、それが大衆的に形になることはなかったとはいえ、議会政党内部の幅広い心配を報じた。コノリーがまさに決定的に勝利したことで、今ケリーの立場は弱くなっている。
 同じことが、キャサリン・コノリー支持に反対して前TDのブライアン・レディンが党を離れるという形で、緑の党で起きた。その反対はほとんど、戦争と帝国主義に対する彼女の反対が理由に見える。少数の他の者も彼の後を追い今党外にいる。
 労働党と緑の党内での左翼共同に対する反対派の消失は、それらの指導部が望むならばこの協力をさらに追い求めることを容易にするはずだ。とはいえそこでの主要な障害は、労働党と緑の党が提案する進歩連合(圧倒的に社会民主党に向けられた)は今にいたるまで、フィナ・フォイルとフィネ・ゲールとの将来の連携においてこれらの政党に対する交渉のテコを最大化するためだった、ということだ。しかしそれは、コノリーキャンペーンに関わった者たちが今求めていることではないのだ。

勝ち取るべきものはもっと多い

 キャサリン・コノリーのキャンペーンに精力的に取り組んだ何千という人々、またそれを受動的に支持したもっと多くの場合、大きな問題は次は何か、だ。大統領職の獲得は、それに付随する非常に限定された権限を前提とした時、国を変えるに十分とは誰も信じていない。
 キャサリン・コノリーは、大統領職の中でわれわれの価値を十分に代表するだろう。そして政治の既成エリートの側に刺さった棘であることを証明するだろう。疑いなく、マイケル・D・ヒギンズの下でまさに普通になったのだが、その役割の制限を踏み越える大統領について舌打ちするコメンテイターからのコラムが続くだろう。
 しかし人々は、われわれに必要な変革を有効にするためには、われわれは大統領職よりもはるかに多くを勝ち取る必要がある、と理解している。大きな教訓は、左翼が統一し人々の動員を追求するなら勝利できる、ということだ。統一がもつ躍動力は自信を生み出すことができ、他の者を感動させて巻き込むことができる。左翼政府の問題があらためて益々中心舞台になっている。
 しかしながら、次期総選挙にのみ焦点を絞るイニシアチブを強めるあらゆる試みは、エネルギーと活動志向が消散することに余地を与えることで失敗が運命づけられている。2020年から2024年に待機して責任ある政権の役割を果たしたことは、SFにとって悲惨だったと分かった。
 エネルギーと穀類の価格に関する繰り返された高騰の影響下で今苦しんでいる人々は、待つことなどできない。パレスチナ、およびわれわれの中立の擁護に向け意味のある行動を求めている人々も待てない。
 労組と社会運動と共に共同のイニシアチブが組織されなければならない――トリプル・ロック(長年観光客を魅了したダブリン近くの丘陵地帯:訳者)を守るために、クリスマスまでに被占領領域法(パレスチナ被占領地域内に設置された入植地との貿易を禁じる法:訳者)の完全実施を求めるために、価格統制を通して生活費危機を終わらせ、暴利稼ぎを終わらせるために、意味のある家賃統制と公共住宅建設と並んで追い出し禁止を実行するために――。

次は何か?―左翼政府への挑戦

 しかしながら、防衛的な闘争だけでは不十分だ。われわれは、国家の歴史上初めての左翼政府という可能性に向け人々の目標を高める必要がある。PBPは他の政党と諸個人に、次期総選挙での明瞭な選択肢――フィナ・フォイルとフィネ・ゲールそしてそれらを支える者たち、そしてそれに対抗する左翼政府――提案に対するひとつの観点に関し左翼の共同をどのように深めることが可能か討論するために、新年に大規模な評議会組織化を提案中だ。
 このすべては、社会主義左翼にこみ入った問題を提起する。われわれの理解では、利潤が優越する資本主義システムは人々が求めかつ必要なもの――住宅や健全な暮らしへの権利、戦争や抑圧のない世界、子どもたちにとっての持続可能で暮らせる未来への権利――を単純に届けることはできない。したがってわれわれは、力をもつ資本家階級の反対に打ち勝ち、エコ社会主義的変革を届けるために底辺からの決起から構成される人民権力の戦略に専心する政権にのみ入るだろう。
 それは、コノリーを支持する他の主要政党の綱領とはかけ離れている。われわれはそうであっても、フィナ・フォイルとフィネ・ゲールの支配を終わらせることを自らも強く願っている。われわれは、われわれが唱えたいエコ社会主義よりはるかに弱い綱領に基づくものであっても、左翼政府を強く願っている。われわれは、この政府と資本主義を改良するアプローチが大衆の前でテストされることを欲している。
 したがってわれわれは、ありそうな綱領の非常に重要な限界にもかかわらず、この政府形成を可能とする投票への約束を含んで、左翼政府に向けたこの動きに参加することにためらいはない。われわれにとっての鍵になる条件は、われわれ自身のエコ社会主義の立場を押し出し、底辺からの人民の力を動員するために諸コミュニティとわれわれの結びつきを強化し続けるという、そのような独立性に対するわれわれの権利を確保することだ。
 かなりの数の人々は今、フィナ・フォイルとフィネ・ゲールを取り除き、左翼政府の選出に向け活動するために、コノリーキャンペーン後の歩みに乗り出そうと切望している。われわれはまさにそこで、1897年にジェイムス・コノリー(アイルランドで最初の社会主義政党を創建:訳者)が提唱した主張に人々を勝ち取る好機としてそれを利用しつつ、かれらと並んで、組織化し共に歩んでいなければならない。その主張こそ、「みなさんが明日英軍を取り除き、ダブリン城に緑の旗を掲げるとしても、みなさんが社会主義共和国の組織化を始めない限り、みなさんの労苦は無駄になるだろう」だった。
 真に新しい共和国を勝ち取るためには、政府を取り替えるだけでは、新憲法を起草するだけでも十分ではないだろう。勤労民衆と被抑圧民衆が権力を握る社会主義共和国が必要なのだ。(2025年10月25日)

▼筆者はアイルランドのRISE(PBP内の民主的社会主義政治組織:訳者)のメンバー。彼は、2019年にアイルランド議会に再選された(初当選は2014年)。以前は、社会党を代表するEU議会議員(2011―2014年)。
(注)前フィネ・ゲール議員で現在は政治コメンテイター。(「インターナショナルビューポイント」2025年10月25日)   

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