オランダ:中道復帰とならなかった議会選

左翼が弱体化し極右は地固め

左翼には流れに逆らう長期的努力が必要

SAP/グレンゼロス

 以下はつい最近行われたオランダの議会選結果に対する当地の同志による評価。そこでは、オランダにおける左翼の著しい弱体化、それ故の極右に対する対抗が右翼化を進める中道勢力依存になっている状況、が伝えられている。左翼弱体化の一因が支持者の高齢化にあることにも言及されるなど、日本の現状と似ている側面もあり、左翼再生を考える上でのひとつの参考素材として紹介する。(「かけはし」編集部)

 10月29日のオランダ議会選の結果に関する多くのコメントは、「中道の復帰」と概括されてよい。しかしながら、ゲールト・ウィルダースの極右PVV(自由党)が11議席を失う一方で中道政党のD66(民主党66)が明確に勝利したという事実は、オランダの政治的なパターンにおける決定的な変化などでは決してない。PVVは今、定数150議席中の26議席によって、D66と同じ議席数を確保しているのだ。そしてオランダ左翼にとって、祝ってよい理由はなおのことない。

安定し強い姿見せた極右


 第1に、議会の極右は著しく安定している姿を自身で示している。議会内でおよそ3分の1の議席はかれらの支配下にとどめられている。PVVの減少は他の極右政党、JA21(正解2021)とFvD(民主主義フォーラム)の結果により相殺されている。JA21は、PVVと似たような政策を支持しているが、もっと専門技術者的かつ見栄えのよい見せかけでそうしている。他方FvDは、おそらく間違いなくPVVの右側に位置を取り、ネオファシスト的でレイシスト的理念にあからさまに言及する。さらにもうひとつの政党の農民・市民運動(オランダ語の頭文字でBBB)が2021年にポピュリスト右翼政党として議会に参入し、それ以来極右へと位置を移行させてきている。概して言えば、極右が議会での存在感を拡大したのだ。
 今後もっともありそうなシナリオは、中道・右翼内閣の形成だが、それは、極右の成長を活気づける諸々の社会問題を解決することのない内閣だ。したがって、極右のむしろ一層の成長という本物の危険がある。

右へと移行中の不安定な中道

 極右は安定しているが、まさに不安定なのは名高い政治的中道だ。この選挙で真の驚きのひとつは、保守派・リベラル、親企業の政権党VVD(自由民主人民)の減少が限定されたところにとどまったことだった。しかしそれは、この党が変化の途上にはないと示すものではない。
 その現指導者、ディラン・イエシルギョズの下で、党ははっきりとさらに右へと移行してきた。VVDは、D66へと投票先を変えたリベラルからの「左」の支持者を失った。しかしこの損失は、党の新路線に同意したように見える前PVV支持者の流入により右側で相殺された。結果としてVVDは、ますます「中道の右」ではなくなりつつあり、一層極右の自然な同盟者になろうとしている。
 そしてD66もまた、右へと動いてきた。指導者のロブ・ジェッテンはもはや、熱烈な気候運動支持者のレッテルをかつて喜んで受け容れた政治家でも、気候正義のデモに現れた政治家でもない。
 それに代えてD66は、オランダでうまくいかないことすべての罪をまさにしばしば帰せられる政治的に力のないグループ、すなわち難民、に対する攻撃に加わってきた。ジェッテンのD66は、防衛支出の増額、EU外への難民申請者の引き止め、また福祉切り下げという右翼的政策と曖昧な進歩的な感情を何とか組み合わせることができ、それによって選挙に勝利した。つまり外見だけが進歩的なのだ。ついでながらこの移行の結果は、2021年比での僅か2議席増でしかない。ここでもまた、いわゆるパターンの変化は全く実質がない。

中道左翼のさらなる腐食

 D66の台頭は大きくグリーンレフト(注)と労働党を犠牲にして生まれている。これら2政党は、合同の歩みに取りかかり、今回の選挙にグロエンリンクス―PvdA(グロエンリンクスはグリーンレフト、PvdAは労働党)という共同リストで参加した。
 D66もまた保守政党から票を引きつけたが、それもかなり小さな程度で、というにすぎない。グロエンリンクス―PvdA合同構想は、グロエンリンクスとPvdAが2021年に気づかされた不振から這い上がろうとする試みだった。
 PvdAはすでに2017年に終わっていた。その年この党は29議席という歴史的な敗北を喫した。これは、反VVDキャンペーンで選挙戦を戦った後、VVDが率いる内閣に参加し、緊縮の課題設定を助けるという党の決定、に対する処罰だった。
 そして党の合同はこれを思い出させるものにはならないだろうと考えられた。
 グロエンリンクス―PvdAは魅力的なオルタナティブになろうと、今異なったメッセージを届けようと試みている。しかし同時にその政治的な視野は、できる限り最速の時期に右翼との連立政府参加に向け努力することに限られている。対抗権力を構築する野党になるという選択肢は、その指導部にとって文字通り想像できないもののように見える。しかし、D66およびVVDと共に中道・右翼内閣に参加するという選択は、現実の蓋然性だが、党にとってはおそらくまずい結論になるだろう。
 グロエンリンクス―PvdA指導者のフランス・ティマーマンスは、新党が自身の位置として気づいたジレンマの体現者だった。彼は選挙期間中、「不必要に過酷な」緊縮政策が実行されたVVD主導政権への参加経験から「学んだ」と言明した。ティマーマンス自身がこの内閣の一閣僚で、その形成を彼も強く支持した。
 ティマーマンスが達成したもうひとつは、左翼の社会党との協力を妨げたそれ以前の役割だった。これについて彼は、「かつて共産主義者だった者は誰も絶対信用するな」と語った。
 ティマーマンスは、中道内閣内の穏健右翼との協力が目的でなければならないと確信しているいわば正直な政治家だ。しかしそれは、左翼野党指導者として説得力をもつ上では彼の助けにならなかった。グロエンリンクス―PvdAがD66に傾きつつあった支持者を取り戻すことができず、また新たな支持者の獲得もできなかった、ということがその結論だった。

左翼総体の弱体化さらに進行


 第2の驚きは、この選挙が社会党に再度の敗北をもたらしたということだった。それは5議席から3議席に後退した。現在までほぼ20年、この党は議会選で追加的な議席を得ることができずにきた。党が25議席を得た2006年に刻んだ歴史的な記録で残っているものはほとんどない。党の自己批判の欠如は落胆を呼び続けている。しばしば大いに、失望を呼ぶ選挙結果は党外の要素に帰せられている。党は、新指導者と戦闘的なレトリックによって今にも小規模に復活しかかっているように見えた。しかしさらなる失望が続いた。
 この敗北に対する説明の一部は、その縮小中の党員と党の社会的基盤の高齢化だ。多くの元社会党支持者が衰えつつあるのは印象的だ。
 人々が投票先を代えるとき、普通はかれらの元本籍にもっとも近接したものに向かう。しかし社会党の場合、抜本的に向きを変えつつある、この場合は極右に向かう離反者の数が、目立って多い。社会党の「経済的には左翼だが社会的には保守」の路線が、人々が極右を選択するのを抑止していない。
 概括すれば、極右へのオルタナティブとして、政治的中道のいわゆる復帰を喜ぶ理由はほとんどない。この中道の不安定さだけではなく、その中味もまた一層右になっているのだ。もちろん左翼はもっと喜ぶ理由がない。エコロジストの動物党がその3議席を維持できたという事実、また極右が幾分以前よりも分裂気味という事実も慰めと言えるものではない。
 この選挙はあらためて、大都市以外では急進的な左翼党のBIJI(オランダ語で「共に」)の存在感が事実上皆無、ということも示した。首都のアムステルダムでBIJIは2・4%を獲得できた。しかしアムステルダムはネーデルランドではないのだ。BIJIが軍国主義、NATO、レイシズムに反対する首尾一貫した語りを保持しているという事実もそれで十分とは言えない。その未来は不鮮明だ。これらの選挙を経て、オランダ左翼の位置は空前の低さにある。

真の左翼政策への取り組みを


 もちろん、オランダ左翼の後退は独特というわけではない。つまり右翼は世界的に上昇基調にある。この選挙結果を特定の個人が果たした役割だけに帰することは過ちになるだろう。
 確かに、選挙キャンペーンは益々ショービジネスに似たようなものになりつつある。ジェッテンが正しくも言ったように、多くの人々は、十分に考えた政治的確信を基礎にではなく、「感覚的反応」に導かれて投票している。
 しかしそれは、一定の政治運動がそうした感情に訴えることに成功した理由は何か、という疑問を白紙のまま残している。怒りがしばしばレイシズムと極右への支持の形態をとっているのはなぜだろうか、またD66のような中道政党が自身を希望や楽観主義の源として押し出すことができているのはなぜだろうか?
 ある労働党の戦略家はかれらの敗北を「貧困な対話」のせいにしている。つまり党は伝えるための良質な話をもっているが、今なお党が「知性にあまりに多くの敬意」を払いすぎているために、それを説得力をもって届けることができていない、と。したがって、もっとむき出しの民衆扇動と空虚な約束が戦略欠如を埋め合わせなければならない。おそらくそれは議席獲得を助けることができるが、しかし左翼の政策を実行する助けにはならない。
 現在オランダには、新自由主義と決別する政策、住宅不足や医療ケアのような問題に関する広大な多数の利益を優先する政策、気候危機と闘うために真剣な方策を取る政策、といった左翼の政策を本当に可能とするために十分大きな聴衆はまったくいない。これが出現するためには、十分な人々がそれを切望しなければならないだけではなく、かれらがそれが可能だと説得されることも必要だ。そうなるまで、人々は極右へのオルタナティブとして穏健右翼を選択するだろう。あるいは、棄権者の大集団に加わるだろう。
 対話戦略はこの原理的な問題を解決はできない。そうした政策に向けた基礎の建設は流れに逆らう長期的な努力になるだろう。それは、人々の組織化、かれらの日常的な懸念への取り組み、そしてそれを次の選挙で終わることのないビジョンに結びつけることを必要とする。それは、闘い、論争、そして信念を必要とする。それは、強力な社会運動とそれらに表現を与えるひとつの政治組織を必要とする。われわれがこれに冷静な感覚と行動で立ち向かうのが早ければ早いほど、結果はより良好になるだろう。(2025年11月6日、初出は「グレンゼロス」)

▼「社会主義オルタナティブ政治」(SAP)(元オランダ社会主義労働者党)は第4インターナショナルオランダ支部。グレンゼロスはその出版物の名称。
(注)グロエンリンクスは、共産党(CPN)、平和主義社会党(PSP)、政党ラジカルズ(PPR)、福音主義人民党(EVP)の合同によって1990年に形成された。(「インターナショナルビューポイント」2025年11月12日) 

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