メキシコ:今こそ社会改革の徹底的推進を
Z世代と極右の策動
幅広い社会運動構築と接合された改革深化へ
ホセ・ルイス・ヘルナンデス・アヤラ
ラテンアメリカに対する支配意欲を臆面もなく公言するトランプが、軍事介入の脅しをかけている国のひとつが隣国のメキシコだ。このトランプを当てにして同国の極右勢力が政治と社会の不安定化を狙った行動に出ている。それは民衆的支持を集めてはいないが、警戒を要する状況であることは間違いないと思われる。以下はこれらについて現地の同志が伝えている。(「かけはし編集部」)
オリガルヒ層とドナルド・トランプの開けっぴろげな賞讃により支援されるメキシコの右翼は、クラウディア・シェインバウム政府を不安定化させるため、今社会的な不満を利用しようと試みている。かれらの動員能力は限られたままにあるとはいえ、その危険は実体的なものだ。唯一の効果的な障壁は、依然変革計画の深化、およびファシストの脅威に対抗できる自律的な社会運動の建設だ。
Z世代を使って政府を倒す策動
国内と世界の両方の大衆メディアは、クラウディア・シェインバウム・パルドの進歩派政府に反対する昨年11月15日における「Z世代」による決起がもつ、不安定化を進める影響と言われるものに関して大きな期待をあおった。しかし結果は明らかにその後援者たちにとっては失望だった。国中で集まった8から9万人の内、若者に相当するのは30%にすぎなかった。それは、本来それ自身に悪化の責任があるにもかかわらず、口実として今日治安の危機をもち出しているような、右翼と極右の諸政党が組織した他の行進のそれに似た比率なのだ。
主催者たちは、ネパールで腐敗し深く不人気な政府の打倒に成功したような、若者――いわゆるZ世代――数万人の動員をメキシコで再びつくり出そうと挑んだ。
確かに、「ハリソ新世代カルテル」によるウルアパン――ミチョアカン州第2の都市――市長のカルロス・マンソ(反マフィアで著名だった:訳者)の殺害は激しい全国的な不満を噴出させた。そしてそこにはその世代の一部と自己を同一視する若者が含まれる。しかしその憤りは、すぐさま右翼諸政党によって道具にされ、かれらはそれを公然とクーデターをもくろむ決起のエンジンに変えようとした。
その目的は、ナショナル・パレス(政府庁舎の建物:訳者)を接収することだった。しかしその策謀は、結局活力を奪われることに終わった。その呼びかけを拒絶し、野党の操作から距離を置いたのは同じ若者たちだった。
その決起を駆り立てた諸勢力は、完全に識別可能なオリガルヒと保守派諸部分から現れた。アステカテレビ局の所有者の実業家であるリカルド・サリナス・プリエドが目立っているが、彼は国家との間での課税をめぐる紛争、およびアルゼンチン大統領のハビエル・ミレイといった人物のネオファシストに益々近づく主張、で知られている。
これに加えて、高位のカトリック司教――クリステロ戦争(1920年代後半の、世俗的で反教権の政策をめぐる内戦:訳者)百年祭祝賀を準備中――、およびPRI(制度的革命党)とPAN(国民行動党)の歴史的指導者たちがいた。そしてこれらの政党の議員たちは、クラウディア・シェインバウムの政府を「共産主義者」と描く根拠のない告発とヘイト発言を広げ、マンソ殺害の責任を政府に被せている。ジャーナリストと知識人たちも参加し、それを支える証拠も示さずに政府の「権威主義的漂流」といわれるものを糾弾している。
チリでのかつての戦術が再出現
このうわべだけの利害関心からなる毒のこもった混合物は、今回の右翼決起が内包する新生の特徴を説明する助けになる。今回の抗議行動は、自らを薄っぺらな「民主的」外観(白衣の行進、ピンクの潮、連邦選挙制度防衛、等々)で覆うことを試みた以前の決起とは異なり、ある種公然としたクーデター策略的特性を呈した。
メキシコへの米軍介入を求める、クーデターを先導する軍隊を求める、そうした明瞭な呼び掛けが回された。ナショナル・パレスを防護する金属フェンスを引き倒すための明らかに協調された暴力行為が記録された。ナチのシンボルを示すTシャツと並んで、ミソジニーの、ホモ排撃の、反ユダヤ主義的、性差別的、またレイシズム的表現もまた激増した。
この脈絡の中で、米国大統領のドナルド・トランプがこの決起を賞讃し、次いで麻薬取引との戦闘を口実にしたメキシコへの介入の可能性を除外しなかったことは全く偶然ではない。米帝国主義の手が今新たなファシストの怪物のゆりかごをゆすってあやしている。
11月15日の行進は小規模で、何よりも急進化した右翼の捨て鉢さを表しているとはいえ、その意味を過小評価してはならない。このところの日々、交通労働者と水の保護担当者による大規模なストライキがあった。そこでは、本物の要求――公共交通における安全の改善、および大手多国籍企業の支配下に水が集中され続けることの阻止――が、政府を不安定化しようと追及する右翼指導者たちの操作と組み合わされている。それは、いくつかの特徴で、1973年のサルバドール・アジェンデに対するクーデター以前にチリの右翼が使った戦術を思い起こさせるシナリオだ。
治安悪化問題の真実とは
クラウディア・シェインバウムの任期中にさまざまな犯罪グループには相当な打撃が加えられたという事実にもかかわらず、この問題はしつこく残り、いくつかの領域では広がってさえいる。麻薬取引――強奪、誘拐、債務回収、女性の人身売買、サイバー詐欺、マネーロンダリングと並んで――は末端のギャングの仕事ではない。それは、この国の高位の政界、実業界、金融界内に深く統合されたひとつの産業だ。
その急激な世界的増大は、幅広い社会層内に大量の失業を引き起こした新自由主義的経済モデルの乱入に遡る。アジアや国の南部への製造業移転の後、日一日と空になる米国大都市を思い出さない者が誰かいるだろうか?
メキシコでは、ミゲル・デ・ラ・マドリ、カルロス・サリナス、エルネスト・セディージョ(いずれもPRIの大統領で、NAFTAの締結など、新自由主義政策を遂行した:訳者)が数十万人の人々を街頭に放り出した。生き延びるために、犠牲者たちは3つの選択肢へと陥らされた。すなわち、米国への移住、非公式経済への参加、あるいは麻薬取引に結びついた周辺社会への合流だ。これらの活動を取り囲む違法性は、新たな犯罪ネットワーク、つまり人間と女性の人身売買ネットワーク、密輸や海賊行為の諸組織、の苗床として機能した。そして麻薬取引――収益力が最大の活動――の場合では、組織は一層、政治や経済の権力と協力している。
われわれは誇張なく言うことができるが、1980年代におけるカルテルの爆発的成長はメキシコ国家のまた米国の――直接的あるいは間接的な――保護がなければあり得なかっただろう。知られていることだがワシントンは、アフガニスタンとニカラガにおける密かな戦争に麻薬取引に由来する財源によって資金を充てた。
カルテルは末端のギャングではない。それらは、被雇用者数千人を抱える多国籍企業として、また広大な領域を支配しつつ、地方政府、指導的政治家たち、判事たち、また軍の司令官たちに浸透している権力ネットワークとして機能している。
一種の「麻薬文化」は、多くの若者たちがかれらの犯罪的な暮らしは短時間になるが、しかし贅沢でけばけばしいライフスタイルで埋め合わされるのが当然と考えるような、これらの地域で現れた。それは、もっとも暴力的な限界にまで達した極度の個人主義の新自由主義的哲学以外の何ものでもない。
これらの諸組織、それらの権力ネットワーク、そしてそれらを正統化する文化との戦いは、いわば長期的な任務になる。資金の情報収集、政治や司法や軍のエリート内の汚職一層、そして犯罪グループ――自衛グループ組織や地方の地域における共同体警察を含んで――に対する決定的な行動に加えて、基本となる解決策は、集団的な価値と連帯に基づくより平等主義的で公正な経済システムを建設することだ。換言すれば、新自由主義の解体、および社会主義的オルタナティブの方を選ぶような文化的戦闘だ。
ファシズムとどう闘うか?
メキシコがそこでの極右とファシズムが守勢である数少ない国のひとつである主な理由は、新自由主義との根源的な決裂はないとしても、政府が持続したやり方で多数の生活水準を何とか引き上げることができてきた、ということだ。最低賃金の引き上げ、社会的プログラムの拡張、インフラ事業への投資、外注の規制、結社の自由における前進、エネルギー主権の余裕の回復、そして大実業家の税金支払いの義務が、いわゆる「第4の変革」に向けた幅広く安定した社会的基礎を強化してきた。
しかし、変革のこの進展が深まらず、中途半端のままであるならば、右翼諸層の再構成に向け豊かな土壌が生み出される。中心的な任務は依然宙ぶらりんだ。つまり、契約上の俸給の購買力を回復させること、アフォレス(退職年金管理者:訳者)の廃止とUMA(公課支払いの計量・更新単位:訳者)での払い込みによる連帯的年金制度の再確立、公衆の安全を相当に改善すること、実のある対話と効果的な解決を通してさまざまな社会層がもつ諸問題に取り組むこと、進歩的な財政改革の促進と悪質とみなされた公的債務の監査――そしてその後の帳消し――などだ。
この課題は、幅広い社会運動の構築と接合されなければならない。そしてその運動は、政府から独立し、極右とファシストのオリガルヒ――中でもリカルド・サリナス・プリエドのような人物の中に表現された――がもち出す脅威を前にもっと高い決起の水準を維持できなければならない。確かに先のような者たちは今、不安定化策謀を通して成功しようと追求している。同時にこの運動は、右翼にも与党にも自身を従属させずに、現在の政府にそれ自身の要求を掲げなければならない。(2025年12月2日、「ジャコバン・アメリカ・ラティーナ」からIVが訳出)
▼筆者は、第4インターナショナルの活動家、およびメキシコ電気技師労組のメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2025年12月19日)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


