トルコ コロナウイルスめぐるキャンペーン

資本主義の枠超える政策実行へ

3月30日 ウラズ・アイディン

 三月一〇日に最初の感染者が公表され、その一週間後には新型コロナウイルスによる最初の死者が明らかになって以降、トルコでは七五〇〇人の感染者と一〇八人の死者が出ている。われわれは、次の数週間において、感染者と死者がさらに劇的に増加すると見込まれる局面に入ろうとしている。しかし、そのことはまた、いままでにとられた措置がウイルスの拡散を食い止めるのに役立ったかどうかを示してもいる。

資本救出が
優先された


「家の中に命はある」とか、さらに直接的なスタイルで「家にいろ」とか訴えているさまざまな公共キャンペーンや民間によるキャンペーンは間違いなく、自宅から動かないことが可能な人々の選択に影響を及ぼしてきた。テレワークを採用した会社で働く、さまざまな部門の「ホワイトカラー労働者」もまた自宅で隔離状態を続けてきた。しかしながら、労働者層のかなりの部分は、この自己隔離を実行することができず、過去二週間にわたって感染のリスクにさらされてきた。
エルドアン体制がとってきた措置は例外ではなく、「この世の終わりのような」危機の中にあってさえ、「人命か利益か」という選択が支配階級やブルジョア政府には何のジレンマを生じさせないことを明白に示している。あらゆることが資本を救うためにおこなわれ、付加価値税軽減や住宅ローン支払の延期といった民衆のための措置はお粗末なものでしかない。予想される経済支援は主に家計債務政策を強化する目的でおこなわれるだろう。しかしながら、いまだに全般的なロックダウンを呼びかけたり、不要不急の経済活動や職業的活動を停止したりすることは問題になっていない。
他方では、トルコ経済は過去二年間近く深刻な危機によって打撃を受けてきたのだが、トルコ政府はおよそ一四〇億ユーロ(約一兆七〇〇〇億円)というきわめて少額の支援パッケージしか提示していない。それもおそらく見直しを迫られ、情勢の動きに押されて増額せざるを得なくなるだろう。

そして弾圧が
今なお継続中


しかし、弾圧はエルドアンとイスラム民族主義者とのブロックにとっていつもながらの仕事なのである。コロナウイルス 危機のさなかにおいて、内務大臣はさらに五つの自治体において、HDP(人民民主主義党)所属の市長を解任し、職務代行者として州知事を任命した。このようにして、二〇一九年三月の地方選挙において勝利を収めた六四都市の市政のうち、三七都市が体制によって「取り戻され」、解任された市長のうち二一人が拘留された。
AKP(公正発展党)と極右の同盟者MHP(民族主義者行動党)はまた、刑の執行を延期する法案を提案した。その目的は感染リスクに直面して、刑務所の囚人数を減らすことにある。この中には性暴力で有罪となった者さえ含まれるが、テロとみなされる行為で服役中の者あるいは未決勾留中の者は含まれていない(体制に対するいかなる批判も、クルド人へのいかなる連帯の表明も「犯罪」という範疇に分類されていることを思い出せ)。HDPのメンバーだということで拘留されている多くのジャーナリストや知識人、とりわけ議員や活動家は、この法律からは何の利益も受けることはできないだろう。
コロナウイルス危機に直面して、体制はまた、ヨーロパ行きを望む移民に国境を開放するという政策を一時的に放棄せざるを得なくなった。ギリシャ・トルコ国境に設けられたキャンプを撤収し、移民を退去させるために、トルコ当局はテントを焼き払い、移民たちを今後二週間隔離するための拘留施設に連れ戻した。

別の政策の
実行を迫る


政府に労働者の生命を守るためのもっと根本的な措置を取らせるためには、今後数週間が決定的となるだろう。その中には、不要不急の生産活動の停止、有給休暇の導入、ガス・電気・水道料金支払いの延期、レイオフの禁止などが含まれる。
第四インターナショナル・トルコ支部が他の二つの革命的マルクス主義者グループ(「出発」グループと労働者民主党)(訳注)とともに行なっているキャンペーンには非常に多くの要求が表現されている。そのスローガンは、国際的レベルでのすべての左翼勢力の任務を非常にうまくまとめたものだ。「コロナウイルスと闘うことは資本主義と闘うことだ!」

(訳注)「出発」グループは、いくつかのグループと個人で構成されている社会主義者の集団。労働者民主党は、旧モレノ派の流れをくむ「国際主義労働者統一―第四インターナショナル」(IWU―FI)を名乗るトロツキスト国際組織のシンパ組織)

▲ウラズ・アイディンは、第四インターナショナル・トルコ支部の機関誌『エニヨール』編集者。二〇一六年のクーデター未遂のあとに布告された非常事態という状況において、クルド人との和平に賛成する請願書に署名したため、職を追われた研究者の一人でもある。(『インターナショナル・ビューポイント』四月二日)

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